材料も人工も上がっているのに、単価は何年も同じまま。本当は値上げしたい。でも「言ったら切られるかもしれない」と思うと、口に出せない。設備や工事の下請けで、この我慢を続けている方は少なくありません。
私はビルメンテナンス業界で13年、発注する側として600社を超える協力会社とやりとりしてきました。その経験から先に結論を言うと、発注元は「値上げそのもの」では業者を切りません。切られるのは、値上げの「言い方」を間違えた業者です。
この記事では、次の3点をお伝えします。
- ✓なぜ設備の下請けは値上げを言い出せないのか
- ✓発注元が「通す値上げ」と「断る値上げ」の違い
- ✓単価を上げる、原価ベースの伝え方3ステップ
なぜ設備の下請けは値上げを言い出せないのか
理由はだいたい3つです。長く続いた取引が切れる怖さ、値上げの「根拠」を自分で示せないこと、そして単純に「どう言えばいいか分からない」こと。とくに2つ目が大きく、根拠を出せないまま「上げてください」とだけ言うと、発注元も社内を説得できず、話が前に進みません。
近年は法律の面でも、コスト上昇分の価格転嫁に応じない取引が問題視される流れが強まっています(制度の詳細は年度で変わるため、公式情報や専門家でご確認ください)。値上げの相談自体は、もう後ろめたいものではありません。問題は中身と伝え方だけです。
発注元が「通す値上げ」と「断る値上げ」の違い
発注側で13年見てきて、はっきり差が出ました。断られるのは「材料が上がったので」とだけ、ある日いきなり口頭で来るパターン。発注元の担当者も、それでは上司に説明できません。
逆に通るのは、材料・人工・諸経費がそれぞれいくら上がったかを数字で示し、定期改定として前もって文書で伝えるパターンです。担当者はその数字をそのまま社内に回せるので、話が通ります。
単価を上げる、原価ベースの伝え方3ステップ
やることはシンプルです。原価を出し、上がった分を数字で示し、定期改定として伝える。この順番を守るだけで、感情的なお願いが「淡々とした事実の共有」に変わります。
STEP 1
原価を出す
材料・人工・諸経費を1件ぶん分解して並べる
STEP 2
上昇分を数字で示す
前回見積と比べ、何がいくら上がったかを明記
STEP 3
定期改定として伝える
「年1回見直す」枠組みで、文書で前もって
自社の単価、いくら上げられるか一緒に整理しませんか?
過去の見積から原価と上昇分を見える化します。
「原価をすぐ出せる」状態が、値上げの土台になる
原価ベースで伝えるには、当然ながら自社の原価がすぐ出せる必要があります。ところが多くの下請けは、過去の見積がバラバラで、材料費や人工がいくらだったかをすぐ取り出せません。これが「根拠を示せない」の正体です。
逆に、過去の見積データから原価が一瞬で出せる状態をつくっておけば、値上げの根拠はいつでも示せます。あるA社は、過去データから工事費・送料・諸経費を自動で算出する仕組みで、見積を1件40分から15分にしました。値上げ交渉の数字も、同じ仕組みからそのまま出せます。
まとめ
- ✓発注元は値上げそのものでは切らない。切られるのは「言い方」を間違えた業者
- ✓通る値上げ=原価を数字で示し、定期改定として前もって文書で伝える
- ✓原価をすぐ出せる状態(見積データの一元化)が、値上げの土台になる
値上げの根拠になる見積を速く正確に出す仕組みは工事見積をAIで1件40分→15分にした実例、事務全体を軽くする話は事務を外注して月170時間を空けた実例で書いています。
「うちはいくら上げられるか」を知りたい方は、過去の見積を見せていただければ、原価と上昇分を一緒に整理します。
