工事の日程はちゃんと伝えたつもりだった。なのに当日、本部から「そんな工事は聞いていない」と電話が入る——店舗チェーンの設備工事を請けていると、一度は経験する場面ではないでしょうか。店舗には伝えた、けれど本部には伝わっていない。この「片方止まり」が、現場では一番もめます。
やっかいなのは、これが「手を抜いたわけではないのに起きる」こと。原因はサボりではなく、誰に・いつ・何を伝えるかを決めずに、その場にいた相手にだけ連絡しているところにあります。
この記事では、次の3点をお伝えします。
- ✓なぜ「店舗には伝えた、本部には伝えてない」が繰り返すのか
- ✓発注元(本部)は、日程連絡の漏れをどう見ているか(発注側15年の視点)
- ✓店舗と本部へ同時に出す「二者同時連絡ルール」で漏れを止める仕組み
なぜ「店舗には伝えた、本部には伝えてない」が繰り返すのか
日程の連絡漏れが起きる場面には、決まった型があります。下見で立ち会った店長に口頭で伝えて終わる。いつもの窓口にだけ連絡する。雨で1日ずれた変更を、その場の電話で店舗とだけ調整する。どれも、目の前にいる相手に伝えれば連絡したことになる、という思い込みから起きます。
店舗チェーンの工事は、日程を知っておくべき相手が複数いるのが普通です。実際に作業を受け入れる店舗、工事を発注して全体を管理する本部、間に入る管理会社。このうち1か所にだけ伝えると、ほかは予定表が空欄のまま当日を迎えます。やり方が同じなら、案件が増えた月に、また同じ場所で抜けます。
現場で店長にだけ伝える
下見や着工日に立ち会った店長へ口頭で日程を伝え、それで連絡したつもりになる。本部の担当には何も届いていない
連絡先が1つしか頭にない
いつもやりとりする窓口にだけ連絡。店舗・本部・管理会社のうち、誰に出せばよいかが案件ごとに整理されていない
急な変更を口頭で済ませる
雨で1日ずれた、部材が間に合わない——その場の電話で店舗とだけ調整し、本部の予定表は古いまま残る
共通点は、「誰に・いつ・何を」伝えるかを決めずに、その場の相手にだけ連絡していること
発注元は、日程連絡の漏れをどう見ているか
私はビルメンの発注・管理側に15年いて、協力会社200社とやりとりしてきました。その立場から正直に言うと、本部が把握していない工事が現場で動いているのは、発注元にとって一番こわい状態です。
本部の担当は、複数の店舗の工事をまとめて管理し、上や取引先に「いつ何が入るか」を説明する責任を負っています。そこに知らない工事が当日いきなり現れると、店舗から問い合わせが来ても答えられず、トラブルがあっても経緯を追えない。だから発注元は、日程をきちんと事前共有してくれる業者を強く好みます。腕がよくても「本部が知らないところで動く業者」は、管理上のリスクとして次第に外されていきます。逆に、毎回もれなく日程が届く業者は、安心して任せられる相手として残ります。連絡の正確さは、そのまま次の発注につながる信用です。
「二者同時連絡ルール」で、連絡漏れを止める
漏れを止める方法は、気をつけることではありません。日程が決まったら、店舗と本部へ同じ文面を同時に送るという1つのルールに変えるだけです。宛先を案件ごとにあらかじめ決めておき、日程・場所・作業内容・所要時間を定型文にして、毎回同じ手順で送る。変更が出たときも、同じ宛先へまとめて再連絡する。これだけで、「片方止まり」も「言ったつもり」も消えていきます。
これまで(片方だけ連絡)
- ✗立ち会った店舗にだけ口頭で伝える
- ✗本部・管理会社は工事日を知らない
- ✗当日に「聞いていない」とクレーム
これから(二者同時連絡ルール)
- ✓店舗と本部へ、同じ文面を同時に送る
- ✓日程・場所・作業内容・所要時間を定型で
- ✓変更時も同じ宛先へまとめて再連絡
「聞いていない」 → ゼロへ
実際、ある設備メンテナンス会社(以下A社)は、見積・報告書・案件管理・メールまで事務をまるごと外注し、月およそ170時間を空けました。案件ごとに宛先と定型文を用意し、日程が決まった時点で同じ文面を関係先へ流すようにしたことで、当日「聞いていない」と言われる場面そのものが減っています。
先月、「聞いていない」と言われた工事は何件ありましたか?
案件ごとの宛先と定型連絡をどう組むか、仕組みの概算をお出しします。
一般の連絡・電話まかせとの違い
日程連絡というと、電話代行や受付の外注を思い浮かべる方が多いはずです。ただ、これらは「かかってきた電話に出る」「決まった用件を伝える」のが中心で、そもそも誰に連絡すべきかは現場側で決めておく前提です。宛先の整理が抜けていれば、丁寧に電話しても片方止まりは直りません。
谷津事務代行は、店舗・本部・管理会社という設備工事の連絡相手の構造を理解したうえで、案件ごとの宛先と定型連絡まで一緒に組みます。電話に出ることではなく、もれなく届く形を作ることに効くのが違いです。
今日からできる、日程連絡の漏れを止める3ルール
仕組みを入れる前でも、手元でできることがあります。次の3つを習慣にするだけで、連絡漏れは目に見えて減ります。
- ・案件を受けたら、その案件の連絡先を「店舗・本部・管理会社」と先に書き出す
- ・日程が決まったら、書き出した宛先へ同じ文面を同時に送る(日程・場所・作業・所要時間を必ず入れる)
- ・変更が出たら、その場の相手だけでなく同じ宛先全員へまとめて再連絡する
宛先を先に決めておくほど、連絡は「思い出して伝える」ものではなく「決めた相手へ同じ形で出す」ものに変わります。さらに案件ごとの宛先と定型文を仕組みに乗せれば、記憶に頼る場面そのものを減らせます。
まとめ
- ✓連絡漏れの原因はサボりではなく、その場の相手にだけ伝える連絡のしかた
- ✓発注元(本部)は「自分が把握していない工事が動く」状態を一番こわがる
- ✓店舗と本部へ同時に出す二者同時連絡ルールで、「聞いていない」はゼロに近づく
連絡だけでなく、電話や案件の管理まで含めて手間を減らしたい場合は、電話を一次受け・履歴化して現場を止めない方法や、受けた案件・出した見積が消えるのを仕組みで止める方法もあわせてご覧ください。
まずは、先月「聞いていない」と言われた工事が何件あったかを教えてください。案件ごとの宛先と定型連絡をどう組むか、漏れを止める仕組みの概算をお出しします。
